2012年11月19日月曜日

パオロ・マッツァリーノさん『怒る!日本文化論』11月22日発売!


 生きる技術のA藤です。「生きる技術!叢書」新刊のご案内です。
 11月22日に発売になるのは、パオロ・マッツァリーノさんの『怒る!日本文化論』です。パオロ・マッツァリーノさんと言えば、世の中の「常識」とされていることがらを統計データをもとにひっくり返し、なおかつそれをエンターテイメントにしてみせた『反社会学講座』で衝撃のデビューをかざった謎のイタリア人戯作者。イタリア人ながらも、なぜか立ち食いそばや落語が好きだったりと、日本的ドメスティックな感性が光る論客です。

 今回、マッツァリーノさんが俎上にあげるのは「怒る、叱る」という行為。
 みなさんは公共の場で、マナーの悪い人たちと遭遇したときに、その迷惑行為に対して注意していますか? たとえば満員電車のなかで、メタル系の音楽を大音量で聴いてその音漏れがはなはだしいお兄さんにたいして、「音漏れてますよ」と注意できますか?

 こういう迷惑行為にたいして、うまく注意するのはなかなかむずかしいもので、たいがいの人は「まあ、あとちょっとで乗換えだし」とか言って、知らぬふりを決め込んで怒りを我慢してしまうものだと思います。しかし、著者の論理によれば、その我慢が日本という国をダメにしている要因のひとつなのです。
 著者は言います。

 いい人、やさしい人ほど、社会の不条理を敏感に感じ取って、不愉快な思いをします。そして、そういう人ほど、なるべく怒りをガマンしてるものです。それでも人間ですから限界があります。普段から人一倍ガマンしている人なのに、たまたま限度を越えてキレてしまい、その一発だけが原因で、周囲からの評価を大きく落としてしまったという非常に不幸な人は、けっこういるはずです。
 

 近所のこどもや、電車に乗り合わせたオトナが不作法で不愉快なことをしていても、なにもいえないような人には、天下国家を語る資格などありません。
 こうした信念のもとに、著者のマッツァリーノさんは、靴をはいたまま座席に上る電車内のこどもや、図書館内で携帯を使って大声で話しているオトナなどに対して、こまめに注意をする実践を呼びかけ、またご本人もその実践を地道に積み重ねてきました。

 最近では、竹島、尖閣諸島など、隣国との領土問題が火種となって双方の世論がヒートアップしており、メディアではずいぶん勇ましい発言などもとびかっているようですが、領土問題に青筋立てて怒る前に、身近でちいさな問題についてきちんと怒り、事態を収束させていく経験を積み重ねていくことのほうが、マクロな視点から見て重要であると思われます。

 そんなこと言ったって、電車のなかで他人に注意するって怖くない? 逆ギレされて危ない目にあったりするかもしれないし……。そんな心配をする読者の方のために、今回の本では、「怒りをガマンするな」という理論だけではなく、そのための実践的な知識も満載されています。

 そもそも他人から注意されて聴く耳もつものなのか? 危険なことはないのか? どんなふうに注意すると効果的なのか? そんな疑問に対して、長年の経験知をもとに具体的なノウハウを公開しています。相手からシカトされたらこっちの勝ちと思えとか、深追いはしないとか、危ないと思ったらすぐに逃げようとか、こうした細かな知恵は、世のフラチな輩に怒り、叱り、注意し続けてきた著者ならではのものだと言えます。

 外交術を勇ましく語ったりする本、あるいはビジネスにおける交渉術をレクチャーする本は世の中に多々ありますが、電車の迷惑乗客との交渉についてこれだけ詳細に語った本は、かつてなかったと思います。こんな些細なことに、これだけのエネルギーを注げるマッツァリーノさん、やはり只者ではありません。

「行儀の悪い子供も叱れない人に、天下国家を語る資格はありません!」

 この主張にシンパシーを抱いた方、ぜひご一読をおすすめする次第です。
 11月22日発売、よろしくお願いいたします。



イラストはロビン西さん、装幀はいつものようにアジール